2009年5月31日日曜日

【書評】フューチャリスト宣言【大賀】

梅田望夫/茂木健一郎著「フューチャリスト宣言」(2007年、ちくま新書)
2009年5月30日読了

***

 「ウェブ進化論」梅田氏と脳科学者茂木氏の共著とのことで、本を開く前からワクワクした。対談形式の文章は、非常によみやすいがその内容は濃いものだった。ウェブ世界への可能性と期待をここまで抱いている日本人はなかなかいないと思う。犯罪がおこれば「インターネットの掲示板のせい」、いじめがおこれば「学校裏サイトのせい」、著作権の問題は「無料動画サイトのせい」-日本社会は問題の原因をウェブ世界に見出だすことが多いように思われる。それゆえに、人々がウェブに対して抱く感情は負のものばかりだった。しかし本書を読むと、その日本人的な考えがとても「保守的」だと感じる。
 ウェブ世界は、世界各国の人々の「知」を集積した場であると著者たちは言う。日本社会では、「ウェブに掲載されている情報は信憑性の怪しいものばかりだ」という意見があるが、だからといってウェブ=悪の世界と考える必要はないだろう。現に、ウェブ上において、真偽のほどがわからない題材に関する議論が行われることもある。人々はけして愚かではない。・・これは私が大学という場においても強く感じたことだ。素晴らしい経歴をもつ教授の講義よりも、友人や先輩との会話によって得られるものが多いと感じたことが多々あったからだ。学生は社会的に見れば単なる一般人だが、「知識や経験が無い」わけではない。主婦であろうと、オタクであろうと、子供であろうと、誰でも自分の持っている知識を公表できる場がウェブ世界だ。本書では「負け犬」「一匹狼」の活躍場と述べられているが、まさにその通りだろう。

 ただ本書に対して疑問を投げかけたい部分もある。それは、「ウェブ世界を駆使し過ぎる」のもどうかということだ。私はフェイストゥーフェイスのコミュニケーションも大事だと考えているし、自分の足で歩き、目で見て、感じることの楽しさも味わっていたい。ウェブ世界と現実世界、どちらも大切にしていきたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿