2009年5月30日土曜日

【書評】ルポ・貧困大国アメリカ【池亀】

『ルポ・貧困大国アメリカ』/ 堤 未果

自由の国アメリカ。そこにはアメリカンドリームを夢見て未だに多くの人々がやってくる。しかし実際に、すべての人に成功するチャンスがあるわけでは決してないようだ。高所得者とそれ以外の人々との間の所得格差は拡大し続け、そして近年の市場原理主義を過剰に重視した政策は、中間層の人々から、貧困ラインぎりぎりかそれ以下にいる人々までをも飲み込んだ。中間層は貧困層へ、貧困層は超貧困層へと追いやられている。現在の未曾有の経済不況の発端となったサブプライムローン問題はこのいい例で、これは中間層の消費率が飽和状態になった時、次のマーケットとして貧困層を狙ったビジネスである。こうした状況の中、今あの「アメリカ」には、格安のジャンクフードしか食べられず深刻な肥満に悩む子供たちや、食べものにさえもろくにありつけずに餓死する子供たち、一度病気にかかっただけで破産に追い込まれる人々、借金や学費のローン返済のために戦地で働くしか道のないという人が多くいるそうだ。こうした内容は私にとって非常に衝撃だった。不況や戦争も、結局そのしわ寄せを一番に受けるのは比較的所得の低い層にある人々だと思った。またそれと同時に、日本に暮らす自分がいかに恵まれているかということを実感した。

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