2009年5月29日金曜日

【書評】なぜ組織は「イノベーション」をつぶすのか?【栫井】

なぜ組織は「イノベーション」をつぶすのか?/エイドリアン・ブラウン

おもしろいケーススタディや問題が充実しており、楽しみながらさくさく読むことができた。
クリエイティビティ・イノベーションにまつわる事例が多く出てきたが、先週のゼミで少し話に挙がった3Mの例が印象的だった。
利益の伸びが停滞している状況を打破するためのイノベーションを、リードユーザーに求めるという発想だ。一般的なユーザーではなく、最先端にいるユーザーの意見を取り入れることで新たな商品開発に役立てることが、ただのユーザー本位のイノベーションではなくより高い所を目指したクリエイティブなイノベーションなのだという印象を受けた。
もうひとつ、架空のクッキー屋のイノベーション例もおもしろかった。ただイノベーションを考えてそれを実行するだけではなく、データに基づいた分析を行い、本当に価値があるものなのかを吟味する。考えることで精一杯だと、実際には価値が自分に返ってこないようなアイデアを採用してしまいかねない。私は一つのことに夢中になって自分の目的を見失いがちなので、特に気をつけなければと思った。

クリエイティブな発想というのは、個人の能力なり努力なりから生まれてくるものだと思っていたので、環境がクリエイティビティを左右するという著者の主張に、自分の考えを改めさせられた。確かに一人で悶々と考え込むよりもグループ・組織内で緊張感を持って議論した方が、出てくるものは多いように思う。そのための環境づくりが難しいところではあるのだが。

0 件のコメント:

コメントを投稿