2009年5月28日木曜日

【書評】著作権とは何か【斉藤】

著作権とは何か 福井健策

 社会に利益をもたらすための権利、それが著作権だ。芸術・文化活動が活発に行われるために、著作権は他者の利用を禁止したり許可する。 日本では著作権の制限規定、アメリカではフェアユースという形で他者が権利者の許可なしで著作物を利用できることになっているが、それはどこまで許されるべきなのかという線引きは未だ明確なものではなく、裁判で論争になるケースが多い。正当な利用のみを許しつつ、未来の創作活動の芽をつんではならない。権利者の権利を守ることも大切だが、時に権利の過度な保護をすることによって社会に不利益をもたらしてしまう。著作権はこのままずっとジレンマにいるのだろうか。

 著作権についてはレッシグ氏の講演や輪読を通して最近触れる機会があったので、内容には入りやすかった。著作権とはどういうものであったか、という考え方の確認にはなったが、特に新しい提案などは書かれていなく、「結局著作権は規定するのが難しい」というような結論に終わっていた。しかし著作権の考え方について包括的に簡易な言葉で具体例を示しながら説明しているので、読んだ後には思考がクリアになる。とくに私は以前ゼミでも話が出た「アイディアと表現の違い」についてあまりよく理解していなかったので本書を通して理解できた。アイディアとは要するに発想で、それは表現の基本になるものだ。この発想の段階では著作権はまだ発生しない。発想にも権利を付与してしまえばこの世界の創作活動は壊滅的なことになってしまう。そして発想に肉付けをして、実現したもの(利用されるかたちになったもの)が表現だ。表現とはすべての知的財産である(特許、商標などが与えられたものを含める)。
 アイディアと表現の線引きもまた難しいものだと思う。著作権の問題はこれから克服すべきことがたくさんある。レッシグ氏のように具体的な解決案や提案をするような書籍が現れることを期待したい。

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