2009年5月26日火曜日

【書評】脳と創造性‐「この私」というクオリアへ【大賀】

茂木健一郎著、「脳と創造性‐『この私』というクオリアへ」(2005年、PHPエディターズグループ)
2009年5月26日読了

***

 メディアコムに入り始めて金ゼミの門をたたいたとき、私は尻込みした。「クリエイティブ?創造的になれ?そんなこと、凡人の私には無理だよ・・。」こんな思いを抱いていたような気がする。未だに、私は自分自身がいかに創造的な人間になれるかどうかわからないし、自信が無い。歴史に名を残す音楽家や科学者と自分は違う、そんな思いが抜けないのだ。本書は、そんな「自信喪失」状態の私を奮い立たせてくれるものだった。
 著者である茂木氏は言う。「新しいものを生み出す能力(創造性)は、私たち(人間)一人一人に万遍なく与えられているのだ。」と。脳は創造的でなければ存在しえない。つまり逆を言えば、人間誰しもが持つ脳はそれ自体が創造性を持っており、それを上手く利用することで人は皆創造的な人生を送ることが可能なのである。この考えは私にとって意外なものだったが、同時に勇気をも与えてくれた。
 本書に書かれている「脳の創造性を生かすために」必要な事柄の中で最も印象的だったのが、「他者の存在の重要さ」について書かれている部分は。先に述べたように、私は、創造力というものは個々の人間が先天的に持っているものだと信じていた。しかし実際には、人間はたったひとりの力で創造的には成りえない。友達や家族、あるいはライバルなど、自分とは異なる他者とのコミュニケーションを通して初めて新たなアイディアが浮かぶのだという。その他者が、自分の専門分野とは全く異なる位置に居る人でもかまわない。他者との対話は同時に自己を見詰めることにも繋がるため、自身の創造性を生み出す場となり得るのだ。今までの私は、研究や勉強においては「ワンマン」で行ってしまうことのほうが多かった。この姿勢のままでは、いつまでたっても創造的な人間にはなれない。今後は友人や家族といった多くの他者の存在を大事にしつつ、彼らの意見に積極的に耳を傾けたいと思った。

 また個人的には、茂木氏が、将来の定まっていない「青春期(モラトリアム期間)」の「ウダウダ」した状態も人生において重要である、と語っているところに非常に感銘を受けた。子どもではないけれど、大人にもなりきれなくて、ジレンマに陥りやすい大学生にエールを与えてくれているように思えた。茂木氏の著作を読んだのは初めてだが、その他の本も読んでみたいと思えた。

0 件のコメント:

コメントを投稿