2009年5月22日金曜日

【書評】バカの壁【田島】

「バカの壁」 著・養老孟司

かつて一大ブームを巻き起こしたベストセラーだが私は読んだことがなかったので、この機会に読むことが出来て良かった。ベストセラーは内容自体と、「なぜこの本がベストセラーになりえたか」の二点において私たちに考えるポイントを与えてくれる。
著者は医学部のエライ教授さんなので、茂木健一郎のように'脳科学'的に、「バカな人」と脳を効率的に使える人の差を分析する科学的な本かと思っていたが、対談という形式によるせいかあまり科学的という印象は受けなかった。たまに「そんな極端な」という論理の飛躍があったりして、偉い人のするお説教に、医学のエッセンスをまぶした感じ、というのが私の正直な感想だ。お説教部分は中高年やそれ以上の年代の人に受けそうな感じで、それ自体にはあまり新鮮味は感じなかった。「バカ」というセンセーショナルながら人の劣等感や焦燥感を刺激し読者を惹きつけるタイトル、「医学」という説得力がいいエッセンスになって読者に新しさを感じさせた点などが、この本がベストセラーになった理由だろうか。

とはいえ、内容も考えさせられる部分は多かった。人は日々変わるが情報は変わらない。昔の人はそれを知っていたから約束は絶対だったが、現代人はそれをあべこべに考えているから、自分が同じだからさっきと違うことを言っても構わないと思っている。という部分など、本の内容を読み、自分が今まで疑問を投げかけていなかった「前提」の部分を再び問いただすことができた。金ゼミの議論でもいい意見だと思うのは、みんなが今まで当たり前だと思っていたことに疑問を呈し、独自の見方に立っている意見だ。みんなと同じ観点に立っていては新しい意見は埋まれない。「バカの壁」を読んで、再び前提に疑問を持つ大切さを認識することができた。
あと「寝ている時間も人間にとって必要不可欠な無意識の時間だ」というところを読んで、今まで寝る時間を軽視し削ってきた自分に反省した。ちゃんと睡眠時間はとろうと思います。

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