2009年5月24日日曜日

【書評】バカの壁【戸高】

養老孟司著『バカの壁』

 正直な感想、「なんでこれがベストセラーであんなに話題になったんか意味分からん。」といったところです。
 著者の養老孟司はこの本の発売当時66歳。まさしく年齢が表すように考えが古くて、しかも東大医学部卒という学歴からか、自分は賢い、つまり「バカの壁」にぶち当たっていないという自負を持っているような感じがして、読んでいて胸糞悪かった。
 「バカの壁」というものは、自分が知っている、興味があるものだけについて知ろうとするだけで、自分が興味のないもの、知りたくないものには事前に情報を遮断してしまっているという状態を言うそうだ。これは納得できる。興味がなくとも常にアンテナを広げ、まずその事象を知った上で批判なり評価をすることは創造性を伸ばすためにも必要な行為だ。
 その「バカの壁」の定義と、過去の偉人たちの言葉の引用くらいがこの本の役立つ点で後は養老孟司の主観で自由に喋っているといった印象だ(実際にこの本は独白をつづったものらしい。)。
 たとえば個性というものの定義の仕方も最終的には身体に帰結させ、あまり芸術といった、脳の発想という面には目を向けていない。向けたとしても、それは度の過ぎた社会不適合者に対する点だけで、養老孟司の論であると、才能ある芸術家のたまごたちの目を摘んでしまうことになるのではなかろうか。
 知識は幅広く、確かに教養はあるとは思ったが、果たしてじゃあ、「賢い脳」を養老自身が持っているのかといわれると疑問符が付く本だった。
 

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