2009年5月13日水曜日

【書評】ネット時代10年後、新聞とテレビはこうなる【戸高】

藤原治著『ネット時代10年後、新聞とテレビはこうなる』

 よくある通信と放送の融合関係の本。新聞もテレビもネットに取り込まれて、新たなeプラットフォームが形成されるといったのが筆者の論の骨子でそれをこれまでの新聞、テレビ業界の形態と、これからの融合について述べられている。

 個人的には去年読んだ中村伊知哉氏の『通信と放送の融合のこれから』を読んだ方が面白いと感じた。伊知哉氏の本は、コンテンツ、法体系、政策と幅広く取り上げられていたので興味が途切れることはなかったが、今回読んだ方は始終テレビと新聞に焦点をあてた議論だったので途中から飽きてきたのが正直な感想だ。

 eプラットフォームがオンデマンドか、カウチポテト方式かといった論が出ていたが、僕はオンデマンドだと思う。テレビの情報がeプラットフォームに保存されてしまいいつでも好きな時間に好きな番組を見ることができるといった形式はその番組を探すという検索ありきだ。
 また、このモデルは家族の団らんの場としてのテレビといった存在を希薄にするものではなかろうか。日曜の6時に家族が集まり、ちびまる子ちゃん、サザエさんを見て、天気予報を見ながら食卓を囲む。これが僕の実家での日曜日だった。
 しかし、検索で好きな番組を見るだけとなると、インターネットの動画共有サイトで動画を楽しむスタイルと何ら変わらず、テレビがより個別のものになってしまうのではなかろうか。

 オンデマンドといえば、NHKがNHKオンデマンドサービスを開始したが、1つの番組を視聴するのに315円も出す人間がいるのだろうか。それならば過去の番組ならばTSUTAYAに行ってDVDを借りるし、見逃した番組だとしても、今の技術ではそれこそ自分の好みに合わせて番組を録画可能な技術は醸成されてきているのだから録画したものを見ればいい。
 情報が無料で手に入る時代に、有料でのモデルを築くのは難しいと、以前耳にしたことがあるが、実際開始3か月での利用者数は予想を1,4万人下回っているらしい。
 そもそもeプラットフォームが構築されてしまえばこのビジネスモデルは破たんすることになるだろう。

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