2010年1月5日火曜日

【ホンヨミ!0105④】バルサとレアル スペイン・サッカー物語 【金光】

フィル・ボール  『バルサとレアル スペイン・サッカー物語』

バルサはFCバルセロナ、レアルはレアルマドリード。言わずと知れたスペインのサッカーのクラブチーム。
なぜ、この2チームが取り上げられたかというと、両者の試合はエルクラシコと言われ、スペインのサッカーの試合の中でも特に盛り上がる一戦だからである。そしてその裏には敵対関係の長い歴史が詰まっている。
スペインのサッカーは日本のそれとは比べ物にならないほど地域に根付いている。日本の阪神、巨人ファンよりもずっと、チームと地元住民との結びつきは強く、女が前に出ることがよしとされていないところでもサッカーの話は老若男女みなそれぞれが自説を展開する。
歴史で言うと、バルセロナの方が2年早く誕生した。しかしもともとはスポーツ全般を目的にしておりサッカーに特にこたわりはなかったようだ。両者の対決は1902年に始まる。首都マドリードに本拠地を置くFCマドリードは、時の独裁者フランコによる干渉、影響を強く受ける。対するバルセロナはそれに対する勢力として力をつける。当時はスペイン語以外の公用語が禁止されており、カタルーニャ地方発祥のバルセロナやバスク人純血主義をとるアスレチック・ビルバオなどは弾圧を受けた。バルセロナはとてもおおらかかる自己愛が強い民族で、中央政府による圧力にもめげずに力を伸ばした。バルセロナの選手がマドリードに巨額の金と共に移籍する、審判が八百長を働いた疑惑がある、などの圧力にもめげずに力を伸ばす。
地元ごとに団結して熱くなるこのサッカーへの熱気を利用しようとしたフランコにもうなずける。方言というレベルではなく、根本的な言語が違うほど(バスクの言葉はスペイン語と何の共通点もないと言われている)同じ国の中で特色が違い、誇りを持ってチームを応援する、その感覚は今の自分には想像しても実感がわかない。でも、「銀河軍団」マドリードに対抗できたのは、バルセロナ地方のあの独特の、自分たちが一番だ!というふてぶてしいまでに純粋な雰囲気があったからだと思う。フランコはおそらく、二大勢力をスペインの中でイメージづけたかったのだろう。必ずしも相手はバルセロナでなくてはならないことはなかったはずだ。フェア精神が命のスポーツにおいて、八百長、故意による誤審は許されない。しかし、そのような内戦時代を経て、現在両チームは世界を率いる大きなチームになっている。マドリードは四期連続で収入の多いサッカーチームでもある。金持ちと庶民派チームの対戦を、クラシコと呼ぶのはブラジルやアルゼンチンにもあるらしい。レアルとバルサは両チームとも有名で経済力もあるが、フランコ時代の構図はまさにそうだったと思う。民衆は、庶民派に味方し、ゲームは熱く盛り上がる。
FIFAワールドカップが始まった今、サッカーをこのような歴史的な観点で見るのもいいと思った。

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