この小説は私が最も影響を受けたものの一つだ。初めて出会ったのは高校現代文の参考書の中だった。その時は気づかなかったが、ちょうど物語の最後のシーンが引用されていた。私はそのやさしさに思わず泣きそうになった。
それはさておき、本書はキリスト教の本だと思って読み始めたが、むしろこれは「日本の土壌」と「人間の弱さ」の本だと私は思った。
日本にキリスト教が根付かない理由は、日本の土壌が「沼」であり、外来のものを沈めて、自分たちの形に変えてしまうからだと「棄教してしまった師」と「かつてキリスト教徒だった日本の役人」は言う。確かに、日本は渡来人からはじまり、いろんなものを受け入れては自分たちの都合に合わせて加工してきた。それが悪いとは毛頭思わない。むしろ、日本人の強いCreativityはそこにあると私は信じている。また、我々の学ぶ学問は元をたどれば全て輸入品なのだから、ただ単に知識を吸収するのではなく、その後に日本に根付くかを検討し、根付かないならばどう変えていくかを考えるべきだと思う。ビジネスに関しても然り。
また、この小説では誰もが心に持つ普遍的な「人間の弱さ」を我々に突きつけている。隠れキリシタンたちの神に縋るような弱さも、ロドリゴ(主人公)の持つ強さと表裏一体の弱さも、キチジロー(たびたびロドリゴを裏切る日本人)の弱さが持つ心の痛みも、誰でも心当たりがあるはずだ。この小説はそんな自分の持つ弱さと向き合う勇気を与えてくれた。
これからも自分の弱さに嫌気が差したとき是非読み返したい、私にとって宝物のような小説だ。
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