2009年6月19日金曜日

【ホンヨミ!】21世紀の国富論【菊池】

著者の原丈人氏は、アメリカを拠点に活躍しているベンチャーキャピタリスト。まず彼の特異な経歴に関心を持ち、色々と調べているうちに本書に出会った。

著者は、ただの金融業となってしまったベンチャーキャピタルの現状について述べて、アメリカ流の経営手法を批判している。これは自分にとって新たな視点を与えてくれた。例えば、ROEの偏重。クラウドコンピューティングのNCの時、先生が「新CEOは、就任すると株価を上げるためにまずコスト削減を行う」ということを言っていたが、まさにアメリカ流の経営はそこに問題があるのだと著者は言う。なぜなら、株価を上げるための短期的な利益しか目指さない経営となってしまうからである。さらに時価会計が追い打ちをかける。これでは長期的な研究と投資が行われなくなり、新たな産業が育たなくなるということだ。

 自分の中でのイケてるCEOのイメージは、比較的短い期間で業績を上げ、上場し、会社を売って莫大なキャッシュを得る、というものだった。しかし、これは単なる一時的な流行りで、このようなプロセスは長期的に見たら必ずしも望ましいとは言えないようだ。そういう意味で、新しい視点が与えられた。

ただ、多死多産のアメリカに対しまだ起業数自体少ない日本において、なかなか利益の出ない長期的なビジネスは果たして起業のインセンティブとなり得るのだろうか。たくさん会社が生まれればその分イノベーションも起こりやすくなるという説もあるくらいだ。

 とはいえ、筆者も言うようにポストコンピューター時代はいつか来るのだと思う。その時代の基幹産業を日本から発していこうというのが本書の主張だ。その新たな産業の構想についても、抽象的ではあるが述べられているので、関心がある方はぜひ読むことをお勧めする。

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