2009年5月18日月曜日

【書評】ザ・ネクストビジネスリーダー【村山】

高度経済成長期を経てから大きな転換期にさしかかっている日本で必要とされているリーダー像・リーダーシップについて書かれた一冊。
リーダーシップについて書かれた本でありながら、前提として「リーダーシップはいつも必要な訳ではない」ということが書かれています。そして、その上でリーダーシップが必要とされる二つの状況についての説明がなされています。

まずリーダーシップが必要とされる一つ目の状況は「方向を変えるとき」です。今までのやり方が通用しなくなり、変革が求められている時です。そして、このとき求められるリーダーシップの資質を「自己否定」が出来るかどうかであるとしています。当然、変革の時代にあるわけですから、これまで成功してきたモデルを捨てて、今までの自分のやり方を否定する必要がある訳です。そして、リーダーは自己否定するだけでなく、自らの気づきを他者に分かりやすく伝える必要もあります。単に批判しているだけでは説得力がないからです。かつ、リーダーには「構想力」が不可欠な要素として求められます。ここでの「構想力」とは、「新しいものを生み出す力・見えないものを見る力」のことです。ビジョンはこの構想力を伝えるための手段であり、他者に見えるものです。つまり、ビジョンは構想力の一つ下の概念ということになります。
リーダーシップが必要とされる二つ目の状況は「スピードを増すとき」です。特にスピードが求められる現代社会で、リーダーがしなければならないことは「権限を集中し、実行単位を分散すること」です。権限の集中は一見、独裁的のような印象を受けるかもしれませんが、少し考えれば分かるように、スピード社会で生き抜くためには権限を集中し、方向性を決め、実際に実行する内容は現場に任せるというような効率化が必要なのです。つまり、リーダーの役割は「はっきりとした目的を示すこと」ということになります。本書の中で日本人のクセ・特性として、日本人は「方向が決まると、走りやすい性格で、その方向は一度決まると限界が見えてもなかなか変わることがない」と説明されています。このような、日本人の特性を生かしつつ、リーダーとしてスピード社会で活躍した人物として、本書では江戸時代の井伊直弼が紹介されています。

この本を読んでこれから求められるリーダー像についてのイメージができたのと同時に、新しいものを生み出す力=「構想力」はcreativity(=new+meaningful for society)と同じ概念なのではないかという印象を受けた。

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