2009年5月11日月曜日

【書評】著作権とは何か―文化と創造のゆくえ【戸高】

福井健策著『著作権とは何か―文化と創造のゆくえ』

 ちょうど前回のゼミで、Creative Commons、そして著作権とははたしてどういうことかといったことを扱っていたので、その考えをまとめ直すことができ、非常に有意義であった。
 まず著作権というものを分かりづらい条文を逐一確認し、説明するのではなく、ゼミでも扱った著作権とは「表現」に与えられるものであり、アイデアに与えられるものではないといったことを解説している。
 そして著作権と著作権者にまつわる権利や、実際に模倣や引用行為によって裁判沙汰になった事例を紹介しながら、著者の解釈を読みやすい文で書かれており、非常に読みやすい。

 個人的に模倣に関する考えをここでは述べておこうと思う。音楽や絵画、彫刻など、いわゆる芸術と呼ばれるカテゴリーの作品は模倣により進化してきたものではなかろうか。ここで言いたいのはかの有名なアリストテレスの「芸術とは模倣である」の1つの意味である、自然の模倣ではなく、もう1つの先達の模倣の方だ。模倣にあまりにも敏感になりすぎると、本来創造性を保護し、発展を継続させるための著作権が模倣を取り締まり、創造性の発展を阻害する制度になりかねないのではないのかと思う。
 著書の中の例としても小津映画のオマージュ作品が出ていたが、映画監督が名匠の作風を模倣するといったものは、現在の2次創作の世界にも見受けられることができる。たとえばMAD作品が動画共有サイトで多くみられるが、そこではいわゆる神MADといわれる作風をそっくりまねた発想のMADが多く存在するのだ。
 そもそもMAD自体が非常にグレーな(むしろ著作権法的にはアウトであるが)作品ではあるが、それもニコニコ動画内でのニコニコモンズや、YouTubeでの角川の戦略のように容認の傾向が出てくると、そのうちMAD自体の著作権といったものが問題となってくる世の中がおとずれるかもしれない。

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