池谷考司編著「死刑でいいです」(2009年、共同通信社)
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これが実話だというのだから、恐い。犯罪者がいる社会に対する恐怖ではなく、「犯罪者を生み出してしまった社会」に恐怖を感じずにはいられない。大阪で起きた姉妹殺傷事件の犯人だった山崎元死刑囚。2009年夏に死刑が執行された。彼は最後までこう言っていた。「反省はしない。が、死刑にしてくれていい」
彼は16歳で母親を殺していた。そうして入ることとなった少年院では「優等生」とされ、社会に復帰することを許された。しかし彼の中には、「普通のひととは違う何か」がずっと渦巻いていた。誰が彼を生み出したのか。彼はもともとそういう人間だったのか。それとも、彼の生まれ育った悲惨な環境か。母親か。父親か。義父か。隣近所か。知人か。-この本のもっとも恐ろしいことは、その最大の疑問が最後まで分からずじまいだと言うことだ。
ただひとつだけ言えるのは。いわゆる「普通ではない子」というのは、この社会に存在しうるということ。彼らの存在を認めなければいけないということ。そして-精神に何らかの障害を抱えているとすれば、そのことを認め受け入れたうえで、力にならねばならないということ。
「犯罪者を撲滅する」のではなく、「どうすれば犯罪者を生み出さずにすむのか」を考える。それが、今後の社会において必要とされることではないか。
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