2009年12月10日木曜日

【ホンヨミ!1211⑵】デジタルサイネージ革命【栫井】

デジタルサイネージ革命/中村伊知哉

街中でよく見かける、新しい広告メディア・デジタルサイネージ。その成長率は目覚ましいものがある。2008年の市場規模は649億円。この不況において、前年比114%を誇っている。そしてこの数字は、まだまだ伸びていくことだろう。

なぜデジタルサイネージがこんなに注目されているのかというと、まず、広告に新しい風を吹き込んだことが挙げられる。今までのように、マス型で同じ情報をとにかく広くたくさんの人に伝える広告と違い、ネットワークに接続されたデジタルサイネージは、狙った人にピンポイントに広告をぶつけることが出来る。筆者の言葉を借りれば、デジタルサイネージとは「今だけ、ここだけ、あなただけ」に伝えるメディアなのだ。
また、デジタルサイネージの可能性は、単なる広告だけにとどまらない。オフィスの連絡ツール、学校の情報共有ツール、駅の情報案内ツール、現行の例だけでも枚挙にいとまがない。
進化するデジタル技術は、サイネージに5感を与え、形状に広がりを持たせている。匂いが出たり、タッチパネルになっていたり、超薄型であったり、今後もっとおもしろいデジタルサイネージが出てくる可能性は無限にある。
本書を読んでいて、こんなものも作れるのか!とわくわくしたのだが、実際に目にするデジタルサイネージと多少のギャップを感じてしまった。例えば、本書でも成功例として挙げられる山手線はじめ首都圏の一部電車内で見られるトレインチャンネル。山手線の利用者数や環境を考えると、すごい広告効果があるのだと想像がつくし、実際に予約がいっぱいだという。システム整備にかかった30億円に対して、広告売上金が約570億円(2006年度)も入っているというのには驚いた。しかし、実際山手線に乗っていると、結局テレビCMの代替品であるように感じてしまう。CMだけで飽きさせないように、役立ち情報やクイズなども充実しているのはわかるのだが、ここでテレビCMを流してしまうことが、とてももったいないと思う。電車という環境、時間帯、首都圏という場所性などを考慮して、細やかに広告をフィットさせていく努力がもっと加われば、トレインチャンネルの価値がうなぎ上りするはずだ。
また、筆者も言うように、日本にはコンテンツの強みがある。どんどん進化する技術も、それだけでは意味がない。ポップカルチャーの最先端を走った日本ならではの、ポップでおもしろく魅力的なコンテンツが乗っかれば、日本のデジタルサイネージは世界一を目指せるはずだ。
情報を多種多様な人々の生活に、それぞれ密着させられる可能性を持つデジタルサイネージ。もっと活用されることで、きめ細やかなニーズに応えられる社会が形成されていくだろう。

今後、どのようにデジタルサイネージが発展していくのか、もっとアンテナを張って注目していきたいと思う。

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