2009年5月5日火曜日

斎藤孝著「100%人に好かれる 聞く力」

斎藤孝著「100%人に好かれる 聞く力」(大和書房、2007年)
2009年5月5日読了

***

 高校時代に尊敬する先生が居た。今はもう亡き人となったその先生は、私の祖父のようであり、父のようであり、友達のようでもあった。先生はいつもぼうっとしていて、私が話しかけても上の空のように見えた。私が何を言っても何も答えてくれない。寝ているんじゃないかと思うときもあった。でも先生は、私の言うことをちゃんと聞いてくれていた。その証拠に、私の言うことを繰り返すのだ。「大賀さんはこう思っているんだね」「大賀さんはこういう風に感じているんだね」というふうに。そうすると、私の心は震えた。私の言葉が先生の口から返ってくると、私は、自分自身と向き合わざるを得なくなったからだ。先生の反復的な言葉は、私に、自分自身と向き合うことの難しさを教えてくれた。そして、自分自身と向き合うことの大切さを教えてくれた。
 思えば先生は、「聞く力」をしっかりと身につけていた人だったのかもしれない。本書は、話したがりな現代人へ「聞く力」の大切さと、それを身につけるための方法をわかりやすく説いてくれている。

 現代人は話したがりだ。自分の日記を友人に公開するブログやSNSといったテクノロジーを用いて、とかく自分の気持ちを他者に話したがる。しかし彼らは聞く力に長けていない。彼らの友人も同様だ。だから、「自分の気持ちがわかってもらえない」と感じてしまう。では、聞く力を身につけ、対人関係をもっとクリエイティブなものにするためにはどうすれば良いのか?それには、ただ「聞く」だけではなく「アクティブに(能動的に)聞く」ことが重要となってくる。
 
 ●相手の言うことをよく聞き、メモを取る習慣をつけること
 ●相手の言葉に対して自分の意見や考え、疑問などを入れて書き込むこと

 上記に記した事柄は、「アクティブに聞く」姿勢の一例だ。アクティブに聞くことができる人は上記のことを行っている。なるほど、確かにそうかもしれない、と私は思った。講演会やシンポジウムなどに来る人々を見ていると、一生懸命メモをとっている人ほど、質疑応答の時に鋭い質問をぶつけることが多いと思う。
 以前行ったシンポジウムで、ジャーナリストの原義雄さんのお話を伺った。原さんは、「良い質問は良い意見を聞きだすきっかけになる」と仰っていた。金先生も良く仰っていることだ。そして、良い意見を聞きだすための「質問力」を身につけるためには、しっかりと相手の話を「聞く」ことが何よりも必要なのだ。

 「聞く力」を身につける訓練を、今後のゼミやシンポジウムでの自らの姿勢に生かしていきたいと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿