2009年5月7日木曜日

ハリウッドはなぜ強いか 赤木昭夫

 「ハリウッド」と聞くと、以前は「映画」というイメージしか持っていなかった。この本はそんなイメージをあっさりと払拭するような本だ。

 ハリウッドが世界市場においてなぜ今日までこんなにも事実上独占体制を保っていられたか。その理由は主にハリウッドの配給・金融ネットワークの強さである。
 ハリウッドは、アメリカの大量消費主義とタイアップし、アメリカンドリームと恐怖というテーマをもって消費者を虜にし、
・専門職能集団(制作会社が映画製作の全過程を遂行するのではなく、専門家集団の分業に委ねて、何本も同時に制作するというスタジオシステム。後には、このスタジオシステムに入れない独自のプロダクションも同じような役割をする。)
・配給ネットワーク(制作スタジオが、それぞれ配給会社や上映館を系列化して垂直統合し、自社に有利な金融体制を築く。)
を持って市場操作を行ってきた。

 著者も述べているように、ハリウッドが一番創造的であるのは金融の構造であるかもしれない。市場を独占してしまえば、競争がなくなり、映画のコンテンツの質が落ちてしまうのではないかと思っていた。実際にハリウッドの制作する映画に対しては賛否両論あると思うが、よい内容だけを追求するのでは成り立たないということをはっきりと感じた。やはりここでもマーケティングが重要になってくる。どの上映館を系列化して、どのように配給するか、ということを消費者の動向を把握した上で決定している。だからやはり利潤を多く得るために、独占するということは少なからず役に立っていると思う。事実、そこで得た利潤は次の作品の制作費にあたるのであるから。
 また、現在ハリウッドはデジタルなネットワーク流通と闘っている。ブロードバンドの普及により、インターネットを通じて不当に海賊版などが流出している。ハリウッドはこれから権利ビジネス(著作権保護による利潤の追求)になっていくのだろうか、と最後に問題提起があったが、これは先日のレッシング氏のクリエイティブコモンズの考え方と組み合わせて議論をしたらいいのではないかと思った。

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