とても面白い本だった。一方で、わかりづらい表現も多く、概念的なため理解の及ばないところもあった。テーマは非常に僕好みなため、もう少し時間のある時に、是非読み直したいと思う。
神成氏の「現在のコンピューテーションの目指しているコンビニエント化、スマートテクノロジー化は、計算可能で合理的であるが、その社会的影響に無自覚に進展すれば、これまでの人間対人間の直接的なコミュニケーションをベースにした地域社会や共同体といった計算不可能で不条理な<生活世界>で保持されていたアイデンティティの喪失や社会の共通規範の崩壊を招く恐れがある」との指摘にははっとした。セカンドライフや高精細なテレビゲームなどは現実と仮想空間の区別を難しくする。若者の現実逃避に起因するひきこもりの増加などが良い例だ。すべてを計算可能なものしようとするのではなく、曖昧さなどの計算不可能性についてより深く考えねばならない。
デジタルという要素が人間が現実空間で経験している計算不可能なものを計算可能なものに置き換えてしまっている。この流れのままIT技術が進歩すると0と1という整数値で表現できないものも強引に計算可能なものにしてしまう。自然や人の感情など計算出来ないものと向き合い、妥協していくことが人間的なのではないだろうか。
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