2010年1月5日火曜日

【ホンヨミ!0105④】荒巻の続々世界史の見取り図 近代アジア編【田島】

『名人の授業 荒巻の続々世界史の見取り図 近代アジア編』荒巻豊志著

「今ここ」を知ろうとすると必ず「過去」に直面する。現在は空中に浮かんでいるのではなく、過去の積み重ねの上に連続しているものである。金ゼミなどを通じて新しい出来事を研究しようとすればするほど、もっと歴史を知りたいという気持ちが湧いてくる。

本書は受験生向けに書かれた参考書であるが、受験生以外にとっても国際理解に大いに役に立つ本であると思う。非常にわかりやすく、イメージしやすいように書かれているため参考書は大学入学も十分お世話になることができる。本書の特徴は「見取り図」とあるように、実際の地理と関連付けながら歴史を見ていくことにある。単に歴史の本を読んでいるだけでは、地理的理解は欠けてしまいがちになるが、地理と歴史・国際関係とは密接に関係しており、より深く理解するために非常によい。

この巻は近代以後のアジア・アフリカの歴史を概略を辿っているが、先日本で勉強したラテンアメリカの歴史とも共通する要素が多くあり興味深かった。近代の植民地支配は植民地の自給自足経済を破壊し、一次産業の輸出国に落とし込めた。現代植民地は独立を達成したが、経済の観点からは未だ支配から脱することが出来ていないのではないか。先進国の下請け的作業を担う第三世界の国々は経済的に未だ脆弱だ。

また本書で印象的だった部分は、近代はヨーロッパが覇権を握っていたため「植民地を持つこと」が当たり前だった。しかし彼らから覇権を奪おうと「民族自決」の重要性を訴えたアメリカ・ソ連がWWⅡ以降覇権を手にすると「植民地を持たないこと」が当たり前となった、という部分だ。今我々が賛美している民主主義・資本主義、それは自分たちが選択したものというよりも覇権国が作り出したパラダイムに過ぎない。何百年後にはこのパラダイムも否定されている可能性があるわけで、そういう意味で私たちは「常識」を疑う必要があると思った。歴史を振り返ることを常に忘れず、自分の常識に対する客観視を常にもって行きたい。

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