筆者の専門である生物学をベースに、歴史学や哲学などを引きながら系統樹思考について説明した不思議な一冊。
筆者は系統樹思考とは別の概念として「分類思考」を挙げています。これは物事の一時点の現象に着目して分類するものです。分類思考と系統樹思考の異なる点は、分類思考が一時点の現象に着目しているのに対して、系統樹思考では一時点の現象から歴史的な文脈を推測して、共通の「根」を推測するという点にあります。図で表すと以下の通りです。
図の分類思考ではABCDはそれぞれ別の分類項目に見えます。しかし、系統樹思考を用いることで意外な繋がり(DとBが近い、など)を発見することが出来ます。
この系統樹を発見するには筆者は演繹(induction)でも帰納(deduction)でもなく「アブダクション」が必要だとしています。手がかりから推測される仮説を導き、それが一番現象を説明するかどうかを確かめるという方法です。
これはプロトタイピング、ひいてはデザイン思考に通じるものがあります。(ここら辺はKMDの奥出先生の著書やブログなどが非常に充実しています)
学問というのは現象を研究しながらひたすら系統樹――それはプロトタイプともフレームワークとも言い換えられますが――をアブダクションによって作り上げ、その検証を行う(より多くの現象について適切に説明できているか)ことなのではないか、とこの本でなされている学問横断的(特にいわゆる理系科目)な議論を読んで感じました。
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