クジラは潮を吹いていた/佐藤卓
誰もが一度はそのデザインを目にしたことがあるだろう、グラフィックデザイナー、佐藤卓さんの携わってきた仕事とその背景を語る本。
日常に溶け込むような商品のデザインを手がけてきた彼の言葉に、棚に並べられては除かれていく、という流通品の性質を痛感した。デザインはモノと人とを繋ぐ媒体になるが、現代はその間に入る流通の力が大きすぎて、モノと人の関係がゆがんでしまっているという。とにかく大規模な広告戦略を投下したり、売り場スペースを買い取ったり、本来の関係性と商品が人にもたらすべきものが変容してしまっているのだ。
著者は、同様に、モノが便利な形になったことでも失われてしまうものがあるという。商品を使用するときの一連の体験は、一つの文化として根付いていることもある。一見ただ不便なだけに思えて、使用する仕草ひとつひとつには味わいや深い意味がある。不便とは、それだけ仕草が増えるということだが、その数だけコミュニケーションが生まれるのだ。ただただ便利さを追求することだけが、本当にモノと人を結びつけることなのだろうか。
私たちの生活は、あまりにもモノに囲まれている。それなのに、私はモノについての考えをあまりにも持っていない。
モノと人、そして環境を結びつける一連の流れについてもっと学ぶ必要があると感じた。
2009年12月30日水曜日
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