2009年9月3日木曜日

【夏休み書評】戦略PR 空気をつくる。世論で売る。【宮村】

「戦略PR」とは、メディアや消費者の関心を最大化できるテーマを設定し、そのテーマを広げるための綿密なチャネル設計を行い、設計に基づき情報の伝播を仕掛けるという一連の流れのことだ。

インターネットの出現によって、私達が普段接する情報量が12年前と比べ637倍にも膨れ上がった現在の情報洪水の中で、「明日の広告(佐藤尚之著)」でも言及があったように消費者は「疑い深く・賢く」なり、消費者にモノを売る事が容易ではなくなってきた。つまり、情報量の増大という「量のハードル」とコンテンツに対する厳しい目を持った消費者という「質のハードル」という2つの側面から商品訴求のハードルが著しく高くなってきている。そのような中で消費者に商品を売るために、そもそもの「商品を買う理由」自体を説得的に与えなければ消費者は動かない。消費者が商品を買いたくなるような「空気」、つまり本書が言う「カジュアル世論」を社会につくりだすことができれば、それは商品に対する信頼感や安心感を生み出し、結果として商品購入へと繋げる事ができる。これが戦略PRという発想の骨子だろう。

そのような「カジュアル世論」を生み出すには、消費者たちが潜在的にもっているインサイトを掘り起こすようなテーマの設定と、4マスやインターネットがもたらす公共性、インフルエンサーと呼ばれる人たちがもたらす信頼性、口コミがもたらす偶然性という3つのチャネルの設計が戦略の土台となると筆者は言う。「明日の広告」では、「広告はラブレターのようなものだ」という表現があったが、戦略PRは「ラブレター以前」の話、つまり広告に対するAttentionを引き起こす前の段階で、消費者の間のInterestを高めるような「空気」を生み出す事が焦点になのだろう。広告の場合と同様にPRにおいても徹底的に消費者本位という視点にたつ事が求められる時代である事を感じさせる本でした。「明日の広告」と合わせて読むといい感じだと思います。

あと、本書中に少し言及があった、Word Of Mouth Marketing Associationという所が出しているInfluencer Handbookを少しだけ見てみたのですが、インフルエンサーと呼ばれる人たちのタイプわけや、どのようにしたらインフルエンサーを効果的に「利用」できるのかといった事がまとめられていて大変面白かったです。

0 件のコメント:

コメントを投稿