2009年6月12日金曜日

【ホンヨミ!】変人力 人と組織を動かす次世代型リーダーの条件【勝部】

変人力 人と組織を動かす次世代型リーダーの条件

日本で最も著名なターンアラウンドマネージャーにして現在マイクロソフト日本の社長を務める樋口泰行氏のダイエーの再建奮闘記を中心に変化の時代に求められるリーダーの条件について書かれている。

樋口氏は次世代のリーダーには「現場力」「戦略力」「変人力」の3つの力が求められると言う。そのどれもが私を納得させるものであった。その全てをここに書くことは出来ないが、そのエッセンスを要約すれば「利益を生み出す”主役”は現場であり、経営側はあくまでそれをサポートする脇役に過ぎない、だから現場本位の経営を組み立てるべきである。戦略を練るにあたっては、世の中の流れを大きく見渡し予測する”マクロの戦略観”を持ち、一方”ミクロの視点”で現場から生の情報を仕入れる。そして戦略をやはり”現場に”落とし込む。また、これらを実行するのは、鬼のように執念深く、何を言われようとも信念を貫き通すエモーショナルな能力が求められる。ただそこに、異様なまでの”実行力”が伴わなければ人はついてこない。これらの条件を満たすリーダーになるためには多様な経験を積むことだ。そうすることによって人より幅広い視点を持ち行動することができるから。」

樋口氏の言葉全てに経験に基づいた力があり、そのどれもが素晴らしかった。「負の改革を行っているときは社員たちとの交流を一切避け、転換点で正の改革に切り替えることによって、蓄積したパワーを一気にプラスに持っていく」という華麗なテクニックのみならず、再生ビジネスの本質を突いている。「悪いオーケストラはない、悪い指揮者がいるだけだ。」という言葉があるが、それと同じことが企業延いてはほとんど全ての「組織」というものにも言えると私は信じている。ただし、実際に組織の中で最も動くのは現場(オーケストラ)で、それを動かすのが経営者(指揮者)であるというだけだ。この単純なことを忘れていると、セクショナリズムによる労力の浪費に陥り、顧客も時代も変わったのに「ダイエーだけが変わらなかった」なんてことになる。そこを変えようとする樋口氏の姿は昔見た映画『スーパーの女』を思い出させた。なお、樋口氏は男性である。

ただ一つ、樋口氏が任期半ば、1年ちょっとの短期間で辞任して、マイクロソフトに行ってしまった事実と樋口氏の「投資ファンドの短期回収型では真の再生はままならない」という考えが矛盾しているように思えた。主導権が丸紅に移って問われる「再生の質」が変化したという去る理由は十分なものであるが、それにしてもあっさりしすぎている。短い時間では何にも出来ない、と言ったのはほかならぬ樋口氏ではないか。ダイエーの再建の話も黒字化したという時点で終わってしまっている。ちなみにその後の決算は景気低迷を考慮しても、右肩下がり。だが、これはよく考えてみると樋口氏の「だから短期じゃ無理でしょ?」というメッセージのようにも思える。

本書は再生ビジネスにただならぬ関心がある私にとって、今のところ今年最高の読書だったと言うことをためらわない。次の読書も最高だと尚嬉しい。

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