未来への手紙 『未来の自分に、手紙を書こう。』プロジェクト編
本書は、全国から集まった2万5322通の「未来の自分」に向けて書かれた手紙の中から選ばれた100通を本にしたものだ。未来に向けた手紙のアンソロジー。この企画は、シンガーソングライターのアンジェラ・アキさんが10代の時に30歳の自分に向けて書いた手紙が届いた実体験を歌にした「手紙~拝啓 十五の君へ~」をもとに始まったものだ。全国に向けてテレビ、CM、雑誌、ポスター、ネットを通じて広報し、集まった手紙を、アンジェラ・アキさん、作家のあさのあつこさん、実業家の小笹芳央さんの3名の審査員が100通選んだ。
手紙の中に書かれた内容は変わることがない。その時感じていたことがそのまま文章として残っている。情報が日々刻々と変わっていくのと同じように、自分が考えることも日々変化する。ツイッターやミクシーのボイス機能は、これら刻々と変化する自分の思いをその都度つぶやくことができる。そしてそのつぶやきは新しいものが出れば、時間の古いものはどんどん消えていく。情報だけでなく、人の考えもフロー化してきたことの表れだ。確かに今他人がどのようなことを考えているのか、をリアルタイムで知れることは人間関係において画期的な変化をもたらすと思う。一方で、自分に関してはある一時期の「考え」をストックしておくことも大切なのではないか、と思う。なぜならば、過去の自分から学ぶことも多いからだ。審査員の言葉の中に、「自分の最終的な味方は自分だ」という言葉があった。味方というか、結局考えるのは、自分であるから最終的には自分に頼るしかないということだ。そんなときに自分の考えの軌跡をたどることは重要だ。それも自分としっかり向き合っている時の考えをだ。紙と鉛筆を持てば、気軽につぶやくときよりも、なんとなくかしこまり、必然的に自分と向き合うことになる。そこが未だに紙のメディアに権威を感じる所以だと思う。
書いて長いこと置いてあったものを読み返すと、その時の真剣さがひしひしと伝わってくる。手紙を書くということや、自分と真剣に向き合う機会が減ってしまった現在であるからこそ、このようなプロジェクトがあったのだと思う。一人ひとりが、このようなプロジェクトがなくても、書くこと、自分と向き合うことの重要性に気づき、実行することができるようになればいいと思う。
2010年1月16日土曜日
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