2010年1月15日金曜日

【ホンヨミ!0115①】物語 ラテンアメリカの歴史【田島】

物語 ラテンアメリカの歴史 増田義郎著

音楽から映画から伝わってくるラテンアメリカ地域の貧しさ。「その貧しさはどこからきたのだろう?」世界史を履修していない私はその素朴な疑問をスペイン語の先生にぶつけてみたところ、わかりやすいよとこの本を薦めて下さった。というわけで、インカ文明からスペインの侵略、アメリカ資本の流入までのラテンアメリカ史を概観するのに非常にわかりやすい本です。語り口が読みやすいです。

この本を読んで驚いたことは、アメリカ大陸は15世紀まで他の大陸と一切かかわりのない世界史の孤児でありながら、スペインの植民者が到着した際、ヨーロッパ人も賛美する非常に見事な都市を造り上げていたということだ。現在アメリカ大陸の主導権は完全に北アメリカが握っているが、大陸発見時はその逆で、アステカ帝国(現メキシコ)とインカ帝国(ペルー)が高度な文明を作り上げていた。なんと植民者が到着するまでそこには貨幣経済はなく、物品交換を行っていたそうである。しかしながらインカは20万人もの人口を抱える大都市であった。

現在はグローバル化が進み効率化のために、世界はどんどんひとつになろうとしている。しかしそれは一種の脆弱性を生むのではないだろうか。かつて世界から断絶していたラテンアメリカは、ヨーロッパ人の常識を覆す別の方法で発展を達成していた。グローバル化は世界から多様性を奪う。それは文化的損失のみならず、人間の思考を画一化してしまうことにはならないか。西洋とは異なる独自の価値観を形成することを阻害しないだろうか。

また、ラテンアメリカの植民地支配と搾取を見て、日本という国は植民地化の危機を迎えながらそれをプラスに変えた非常に稀有な国だと感じた。日本もまた第二のラテンアメリカとなる可能性を秘めていたのだが、海外の知識を貪欲に飲み込み独立を模索した、幕末から明治にかけての政治家の超人的な先見性、政治的感覚は特筆すべきものがあると思う。幕末の政治家たちについて知りたくなりました。(大賀さんご指南お願いします。)

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